良い医者は経験に基づく勘が的確である。
しかし、良い医者ほど、経験や勘を信じない。
という話を聞いたことがあります。
私はかつて、足の親指の爪が変色・変形していたことがあり、気にしていました。
もしかして爪水虫かも?とも疑いましたがきっかけは恐らく、家のイスの角に爪を強打して内出血したこと。
それ以来、どうも爪の生え方が変わってしまったようで爪の根元から段差ができているし、全体的に爪が厚く盛り上がっているし白い筋のようなものも見えるのです。
おかしいな〜なんて思いながらも日常生活には特に問題もなかったためしばらくは放置していました。
するとそのうち、わずかではありますが痛みも感じるようになり、色も茶色がかったようなくすんだ色に変色してきてしまったのです。
スポンサーリンク最初に行ったのは近所の内科
これはまずいと近くの内科に駆け込んだところ、「爪水虫ですね」との診断を受け取ることに。
「いやちょっと待ってください!」
「たった今、指先強打からの内出血が原因だと思う、そう伝えたはずです。」
「それに他の箇所に水虫をもっていないのにいきなり爪水虫とか有り得るんですか?」
という反論を繰り広げるも、見事に空振り。
医師は「爪の水虫は飲み薬でしか治せない。けど飲み薬は副作用で肝機能に障害が出ることもあるから血液検査をしましょう。」
そう言って看護師に採血の準備を命じ、私はそのまま血液検査を受けることになりました。
血液検査の結果は次回来院時に、ということだったので次の予約を入れてこの日はトボトボと帰ることに。
釈然としない気持ちもありましたが、それよりも『水虫かぁ…家族にも移ってないといいけど… 』という心配が大きかったですね。
爪水虫対策のために下調べ
次回来院時までに少し時間があったために、webで爪水虫のことを色々と調べてみました。
すると、爪水虫はやはり白癬菌という真菌が原因で、治療には主に内服薬を用いるが副作用があること。そのため血液検査が必要であることが書かれていました。
また、爪水虫の場合は他の箇所も水虫になっている可能性が高く、家中に菌をばらまいている可能性があるということ。
加えて、副作用を許容できない場合は塗り薬による治療も可能となったこと。
さらに、気になる一文が。
”爪水虫と見た目上は似たような症状があるため、確定診断のためには病院で真菌の有無を調べる真菌検査が必要”
ということも書かれていました。
『真菌検査・・・??そんなの受けてないんだけど。』
『それなのに最初から肝臓に負担がかかる薬を飲む前提で血液検査までされた』
『もしもこれで爪水虫じゃなかったら、無意味に薬を飲み続けなければいけないのか?』
そう考えるといてもたってもいられず、すぐさま別の病院、今度は皮膚科で診察を受けることにしました。
皮膚科での診断は?
初めて受診した皮膚科では、事前にちゃんと『真菌検査をして下さい。』と伝えることに。
また、爪が変形し始めたきっかけは内出血であることと、別の内科で爪水虫と診断されたが見た目だけで判断されたために信じられないことも伝えました。
こちらの病院の医師はすぐさま真菌検査をしてくれて、意外にも結果はすぐにわかりました。
「白癬菌は見つかりません。爪水虫ではありませんね。」
・・・正直、ホッとしました。
当時、子供が生まれたばかりでした。家中をハイハイで移動し、すぐに何でも口に入れるわが子にもしも水虫菌が移っていたら・・と気が気でなかったのです。
と同時に先の皮膚科で受けた誤診に対する理不尽な気持ちが怒りとともに思い出されました。
後日、血液検査の結果を聞きに先の内科に行った際に、
「別の病院で真菌検査を受けてきたが白癬菌は見つからなかった。爪水虫でない以上、リスクのある内服薬を飲むわけにはいかない」
「そもそも、血液検査を受ける必要もなかった。」
「そんな血液検査の結果を聞くためだけに再診料を請求されるのは納得がいかない!」
と医師に伝えると、本日の診察料は頂きません、ということに。
しかし医師はあくまで誤診を認めないスタンスで
「真菌検査のやり方次第では白癬菌を見つけられないこともあるから注意が必要。」
と言い残し、血液検査の結果を持ってそちらの皮膚科で診てもらうよう勧めてきたのです。
・・ここの医師は経験や勘を信じて疑わないタイプなんだろうな~。。
・・百歩譲って本当に爪水虫であったとしても、経験による判断ではなく真菌検査の結果で判断した医師の方を信じる!
そう心の中で考えると私はこれ以上のやり取りは不毛と考え、なにも言わず病院をあとにしました。
やっぱり違った
結局、爪の変形は「厚硬爪甲(こうこうそうこう)」とよばれる病気であるということが、後に行った皮膚科でわかりました。
なんだか「こう」ばかりで覚えにくい病名ですが要するに爪が厚く、硬く変形してしまう病気だそうです。茶色〜黒色に変色するのも特徴です。
原因はやはり、爪を強打した際に内出血したこと。これが爪が真っ直ぐ前に伸びようとする動きを阻害してしまい、厚みを増す方向に成長したのです。
痛みを伴ったのは、異常な伸び方をした爪の一部が足の指に食い込んでしまい皮膚を刺激したと考えられます。
厚硬爪甲になるともう元の綺麗な爪には戻らない、なんていう話をネット上で聞いて落ち込みましたが決してそんなことはありませんでした。
この病気は言うなれば、ただの爪の成長不良です。
爪の成長を阻害している部分を丁寧に削り取り、本来爪が生えるべき指の肉の上で爪が成長するように道を作ってあげれば、元通りの綺麗な爪を取り戻すことができました。
まとめ
私が今回体験したように、爪の異常で病院の診察を受けたが誤診されてしまったという話は、実はよくある話です。
例を挙げると、70代の女性が爪水虫と診断されて内服薬を2年にわたって処方され続けたが治らず、肝機能障害まで併発してしまったという話があります。
この場合もやはり、一度も真菌検査などは受けずに医師に見た目だけで爪水虫と診断されたそうです。
結局は 爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)という病気でした。
それだけ爪水虫は見た目だけでは判断しにくいとも言えますが、真菌検査をせずに爪水虫と診断してしまう医者が未だに多くいるという事実をしっておくべきです。
爪水虫に限らず、水虫を疑って病院に診てもらった際、真菌検査をしない医師は信用してはいけません。
爪水虫、水虫をこれから治療しようと考えている方で、良い医者かどうかを見極めようと思ったら「真菌検査をするかどうか」をまず第一の判断基準にすることをおススメします。
また、市販薬で水虫を治そうと思った場合でも、一度は専門医に診てもらい、本当に水虫かどうかを確認した方が合理的といえるでしょう。