一般的に、水虫の治療には白癬菌を殺したり増殖を抑えたりするための『抗真菌薬』を用います。
この抗真菌薬には塗るタイプのものと、飲むタイプのものがあります。
また塗るタイプのものにもクリーム状のものや、軟膏、液体状のものまで様々な種類があり、水虫の症状や部位によって適切な使い分けが必要です。
気を付けたいのが、一見水虫だと思ったものでも、いざ受診してみると実は水虫ではなく他の病気だったりすること。
本記事では水虫の診療を受ける際に気を付けておきたい注意点を記載していきますので、これから水虫治療を開始する方は参考にしてもらえれば、と思います。
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素人判断をしない
先程述べたように、水虫には症状がよく似た別の病気もあります。
足にできものや水疱、いつもと違うかゆみなどの症状が現れると『水虫になったかも・・!?』と早合点して市販薬を塗って対処する人も多いかと思います。
本当にそれが水虫の仕業ならば問題ないのですが、実はこの行為、とても危険です。
なぜなら、できものや水疱・かゆみなどの症状を引き起こすのは水虫だけではないからです。水虫の症状によく似た皮膚病は他にも結構あるんです。
水虫によく似た皮膚の病気
水虫と間違えやすい病気は、かぶれをはじめとして幾つもあります。
それではその代表的な病気と症状を紹介します。
1:掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
水虫と間違えやすい病気No.1がこの病気。
ひと昔前までは水虫と混同されていたほど、症状がよく似ています。
見た目はというと、土踏まずや足の側面などに赤みを帯びた小さなプツプツが幾つもできる「小水疱型足白癬」という水虫とそっくりです。
他にも、爪の形を変えてしまう、いわゆる「爪白癬」のような症状も出ることがあります。
決定的に違うのは、掌蹠膿疱症はカビ(白癬菌)が原因の皮膚病ではないということです。
つまり、体の内部から引き起こされる病気であるという点がポイントです。
とはいっても見た目では判断しにくいのが難点です。
ですがここで水虫と見分ける決定的なポイントを紹介します。
それは、「両足同時に症状が出てきたかどうか」です。
体の中から出てくる掌蹠膿疱症では、小さなプツプツが両足同時に発症しやすいということです。
水虫であれば、大概は片方の足から出るため、ここが水虫と見分ける大きなポイントになります。
また、菌が原因の病気ではないため、人に移す心配もなければかゆみも水虫ほどではありません。
さらに、プツプツの中身も水虫が水疱であるのに対して、掌蹠膿疱症の場合は黄色い膿(うみ)です。
このように幾つか違いはあることは事実ですし、ポイントさえ押さえれば素人でも判別はできるはずです。
ですが、このような知識を持っている方は一般的にはいないでしょう。
これこそが、素人判断で水虫と掌蹠膿疱症とを完全に見分けるのが困難である理由です。
さらに厄介なのが、掌蹠膿疱症に対して水虫薬を塗ると症状が悪化してしまうということ・・・!!
正確に見分けるためにはやはり皮膚科にいって医師に白癬菌の有無を検査してもらうのが一番です。
2:白癬疹(はくせんしん)
水虫を引き起こすのが白癬菌である一方で、この白癬菌によるアレルギー症状もあります。
それが白癬疹です。
生きている白癬菌が皮膚で増殖すると水虫になりますが、死んだ白癬菌ならばそうした症状は現れません。
ところが、死んだ菌にまで皮膚が過敏に反応する人がいます。これを「白癬菌アレルギー」といいますが、白癬菌アレルギーの代表的なものが白癬疹です。
その原因は、
水虫の急性期である
足の裏に水疱がたくさんできていた
治療が適当でなかったために皮膚がただれた
など、主に水虫を放っておいたり、素人療法を続けたせいでアレルギー体質になってしまったという点が挙げられます。
白癬疹になってしまったら、水虫薬を塗るのは逆効果です。
そのため白癬疹の治療を開始する際にはまずは水虫薬の使用をやめ、湿疹の治療から始めなければなりません。
3:多汗症(たかんしょう)
こちらの病気も水虫と間違えやすい症状が出ます。
多汗症はその名の通り手足に大量の汗をかき皮がむけたり、汗の影響であせもができたりします。
こちらもやはり、水虫の薬では全く効き目がありません。
水虫と見分けるポイントとしては、水虫が夏に症状が出やすい病気であるのに対して多汗症では春や秋などの季節の変わり目に症状が出ることが多いという点です。
4:尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
こちらの病気も水虫と似たような症状が現れます。
乾癬はとても治りにくい皮膚病であり、症状としては皮膚に白っぽく厚いかさぶたのついた赤い病変ができます。
水虫との違いはかゆみの程度が弱いという点です。また、人に移す心配もありません。
但し、なんせ「かさぶた」なものですから、厚みが増すとそれなりにかゆみを伴います。
5:まとめ
以上のように、水虫とよく似た症状を引き起こす皮膚病は様々あります。
そしてこれらの病気の特徴は、水虫薬をいくら塗っても効果を得られないばかりか、かえって症状を悪化させるということです。
いずれも素人判断によって市販薬を安易に使わないことが重要になってきます。
市販薬を使うこと自体は間違いではありませんが、このようなリスクを併せ持っていることを心に留めておく必要があります。
実際に、素人判断で水虫を疑って市販薬を使ったのちに病院に駆け込む人も多くいますが、そのうち数割は実は水虫ではないといいます。
そしてこういった人のうちの多くが、かぶれを訴えるようです。
「本当は水虫ではないのに素人判断によって水虫の市販薬を塗った」
その結果、皮膚がかぶれてしまうというわけです。
水虫の薬には、白癬菌、つまりカビの増殖を抑える強い作用があり、かぶれは避けられません。
事実、かゆみや水疱などの原因が本当に水虫であるのに、薬を塗ることによってかぶれてしまうということもあります。
薬を塗れば塗るほど症状がどんどんと悪化し、それでも塗り方が足りないのだろう、と更に塗り続ける。
その結果どうにもならないかゆみと痛みと悪臭に襲われ、そこでようやく病院に駆け込む。
このような事例があとを絶たないのは、薬に対する私たちの認識に原因があると考えられます。
薬に対する認識が甘い
『薬を塗ったおかげですごく染みる。痛いくらいだ。よし、すごく効いてるな!!』
このような考えはとても危険です。
薬には副作用が付きものです。
当然、水虫薬だってこの例外ではありません。
患部に潜む菌を殺す前に、自身の皮膚を傷付ける可能性が十分にありえます。
また、かぶれは一種のアレルギー反応であるといえます。
アレルギーとは、体が特定の物質に対して拒絶反応を起こし体内から警告を発することをいいます。
しかもこのアレルギーはある日突然、それまで問題ないとしてきた物質に対して拒絶反応を示すこともあるのです。
花粉症がいい例ですが、それまで生きてきた中で何の苦労も感じたことのなかった花粉相手に、大人になってから突如苦しめられるという話はよく聞きます。
水虫薬も同じように、これまでかぶれもなく順調に治療してこれたのに、ある日突然猛烈なかぶれを発症させることもあり得ます。
本人にしてみれば『そんなはずがない。昨日まで使えてた薬なんだ。これは他の病気を併発してしまったに違いない・・!』となるわけです。
しかし、長い間使ってきた薬であるからこそ、ある日突然アレルギー反応を示すこともあるのです。
体質の個人差にもよりますが、薬がかえって症状を悪化させる可能性もあることを知っておかねばなりません。
ここまでさんざん言ってきたことではありますが、やはり、「素人判断は危険を伴う」ということを十分に理解しておく必要があるのです。